2012年7月9日月曜日

日本のエネルギー

■エネルギーの未来 

日本でのエネルギーに対する理解が一般的ではないのでここに書きます。 普段はtwitterなどの短い投稿が多いのですが、さすがに短すぎるのでまとめて書きます。

 ■まず、私の専門は建築なのですが、全般的なことから書きます。 

日本のエネルギー自給率は何%でしょう?

 ついで、スウェーデン、ドイツ、オーストリアでは何%でしょうか?


 答えは日本は4%、スウェーデンは40%、ドイツは20%、オーストリアも30%です。 日本はおもに、石油や原油などの化石エネルギーに頼っていて、化石エネルギーはほぼ100%輸入のものです。また、原子力もウランは輸入に頼っています。食料自給率が40%でも問題になっていますが、エネルギーはもっと深刻です。ですから、この問題を大きく考えなくてはいけない。311まで、日本はその切り札として、原子力を50%まで引き上げる計画を立てていました。(あくまで、311までの話しです。) さて、スウェーデンは水力が盛ん、ドイツは石炭火力が盛ん、オーストリアも同様ですが、最近は木材を燃料としたバイオマスが盛んで、その自給率をどんどん引き上げています。これらの国は、石油ショックを経て、ロシアのパイプラインに頼るエネルギーの問題を安全保障の問題ととらえ、自国の資源をどう活用するか検討を重ね、社会を変革してきました。そうしてエネルギーの自給率をあげていきました。これらの国は自国の森林面積が多く、その資源を活用しています。林業を振興し、そこで家具や家といった製品をつくりながら、そこで出たゴミを資源として活用することを進めました。これがヨーロッパ型のバイオマスです。 ところで、日本の森林面積は国土のどのくらいかご存知ですか。 

答えは67%が森林です。 山が急峻で林業に適さないと言われていますが、オーストリアやスイスのアルプスと余り変わりません。オーストリアなどでは機械化がすすみ、間伐などを効率的に行っています。日本の森林は戦後、植林が進み、すでに伐採できる大きさになっていますが、コストがかかるなどの理由であまりちゃんと活用されていません。ただ、量としてはかなり多くの資源が山にあるのは事実です。 これらの資源をどう使うかがこれからの大きな問題になってきます。

 ■エネルギーの上流と下流の問題 

もう一つの大きな問題はエネルギーの使い方の問題です。 エネルギーはさまざまなカタチで種類を変えていくので、そのエネルギーの大元がどうやって産み出されたかが重要です。その大元のエネルギーのことを1次エネルギーといいます。日本は工場などの生産部門、交通などをになう運輸部門など、いろいろとエネルギーをつかう場所がありますが、日本の1次エネルギーの40%は住宅、オフィスなどの私たちの住まいで使われます。 しかし、日本の建物で使われるエネルギーについて、法律による規制はありません。最近、300㎡以上の大規模な建物についての届け出が義務づけられましたが、そこでも規制にはなっていないのです。 一方、ヨーロッパは法律で厳しく決められていて、2020年前後には新築の建物はカーボンニュートラルでなければならないと決められています。カーボンニュートラルというのは、石油などのエネルギーを燃やしたときに発生する二酸化炭素がでない。ということ、すなわち、エネルギーを少ししか使わず、使う場合には、二酸化炭素がでないエネルギーでエネルギーをつくりださないといけないという状態です。二酸化炭素がでないエネルギーは、再生可能なエネルギーのことですが、太陽光発電などのエネルギーです。 ですから、日本の規制はないに等しく、エネルギーが無駄使いされています。ですので、これをまず減らしていくことが重要なのです。

 ■住宅のエネルギー 

住宅でつかうエネルギーは大きく3種類に大別され、地方によって異なりますが、おおよそ、3分の1ずつとなります。一つは暖房、もう一つはお風呂などの給湯、もう一つは家電などの機器類で使うものです。  ぱっと考えると、冷房とか思い浮かびますが、エネルギーの10%程度の割合です。ただ、冷房のピークが夏の暑い日の午後2時〜4時で、産業用の電気のピークとも重なり、ここを抑えることが非常に重要なので、この抑制が電力会社のキャンペーンとして、テレビコマーシャルなどに大きく流れていたせいで、夏の冷房のことを暖房よりも意識しやすいという結果になっています。エネルギー的には、ほぼ全国、0℃近くまで下がるとすると、快適な20℃まであげるためには20℃の落差があります。冷房が35℃から28℃まで下げる7℃の落差だとすると、そちらの方が小さいのでやはり暖房の方が多くエネルギーを使うことになります。 さて、発電所が遠い場合、遠くを運んでくるために必要なコストは、当然1次エネルギーとして計上されます。日本の場合、遠くから電気を送られてくることが多いので、送電ロスが大きいのです。実際、家に届くまでで、35%程度になっていると考えられてます。なんという無駄でしょうか。わざわざ起こした電力はすでに、3分の1になっているのです。議論を戻しましょう。熱でタービンを回し、電気が起きます。電気から熱にすることはさらに非効率的になってきます。ですから、熱は熱で使うことがよいと言えます。熱源は石油でもガスでも太陽熱温水パネルでも良いと思います。そうやってエネルギーの特質を理解することが大事だと思います。

 ■なぜ、エネルギーを節約する話しにならなかったのか。 

ここから先は推測です。ただ、311前は原発による電力供給を50%に増やそうとしていたのは事実です。そして、需要を喚起するために、電力会社は安全な「オール電化住宅」を推進します。お年寄りにも安全なオール電化です。ただ、ここで、どのくらいIHクッキングヒーターが電気容量をつかうかご存知ですか。種類にもよりますが、20Aを超えるものがたくさんあります。オール電化にするなら、100Aでの契約が必要だと言われた家庭もあります。家一軒が30Aで十分だということを考えると、この量は家1軒が3軒になっていくという、電力をより必要な社会にしていくための動きに他なりません。冷蔵庫が省エネ形になっても容量が大きくなれば、トータルの電気量が増えていきます。テレビも同じです。大型のテレビは結構大量の電気を使っています。テレビや冷蔵庫などはたしてどの大きさが必要かもう一度チェックしてみるのもよいと思います。それだけではなく、お湯張ポット(断熱性能の弱い)も結構な曲者です。あれ1台で冷蔵庫1台分の容量になります。 この裏には、総括原価方式と言って、電力会社の電気料金は必要な経費に歩合をかけて決められるという不思議なルールがあります。こうであれば、できるだけ原発をつくり、コストをかけて、それをオンする方法で電力会社は儲かります。需要喚起と言えば、言葉はよいですが、どんどん電気に依存する生活に慣れていってしまった私たちにも責任があります。 

■どのくらいの量のエネルギーを無駄使いしているか 

住宅でいえば、ヨーロッパの住宅の3〜5倍以上多くのエネルギーを使っています。 それを3分の1や5分の1にするにはどうしたらよいか。決め手は家の建て方と基本的な構造の2つにあります。家の建て方は大事です。いかに、冬は太陽の熱をうまく取り入れ、夏はいかによけるか、それにつきます。また、日本の家が旧来持っていたような土壁が蓄熱作用があるので、気候の厳しい時間を遅らせる機能があります。 また、風通しはとても大事です。そういった環境的に家を工夫することがとても大事です。  

一方、家の断熱も大事です。一時、高断熱高気密住宅が世の中にデビューした頃は、この手の家の窓が小さくて不評でした。当時は窓の性能も良くなく、小さくせざるを得なかったのですが、やはりできるだけ、エネルギーを取り込むこと考えると、大きくした方が有利です。この断熱性能は基本的な建物の性能とも呼ばれます。  日本に次世代省エネルギー基準という基準があるのですが、これはもう10年以上前に決められ、私に言わせると前世代エネルギー基準とさえ言えると思います。国交省のトップランナーはただのトップランナーではなく、周回おくれのトップランナーと言わざるを得ません。その次世代エネルギー基準でいうと、私が必要だと思うのは、東京で北海道の次世代エネ基準にするくらいのことが必要だと思っています。そうすると、東京に立つ家であれば、エアコン1台で夏も冬も過ごせるぐらいの性能を持つことができます。贅沢な作りにしなくても、いい性能の家は本当にエネルギーを節約することができます。  最近では良いソフトができていて、その建てられる状況に合わせて、建物の燃費がわかる様になりました。屋根や壁のデータ、窓の位置など、プラス周囲の建物の状況、その立つ場所をインプットすると、どのくらいのエネルギーをつかうか、まるで車の燃費を示す様にわかりやすく教えてくれるものであります。 こうやって家を建て始めれば、いま各メーカーが出そうとしているスマートハウスと同じような効果をあげることができます。今、メーカー主導で出しているスマートハウスは、エネルギーもつくるけど、無駄使いをする部分も大きいです。それよりも、色々な装置をつけずに、エネルギーを省エネルギーにする方がよほどスマート(賢い)といえると思います。

 質問やご意見お待ちしています。

2012年3月4日日曜日

卒原発から「省エネルギー」経由、再生可能エネルギーへ

山形新聞に寄稿し、3月1日掲載された記事です。

 昨年の三月の福島第一原発の事故を契機に、エネルギーに対する関心が高まった。エネルギー自給率がわずか四%の日本においては当然のことである。ここ何年かは休眠状態にあった火力発電所を動かすことでしのげる。でも、将来に向けてきちんとしたビジョンを確立しなければならない。山形県は地震直後は県民全体で節電運動を実施し、知事は「卒原発」を表明した。非常に先進的な取り組みである。石油、石炭に代表される化石燃料は二酸化炭素の排出の問題に加え、枯渇の問題、中東の政治的な不安定など先行きは暗い。これらの問題がなくても、人口が増加し経済が発展しつつある中国やインドなどの需要が増えるため、燃料の値上げは避けられない。これ以上そこに頼るべきではない。だからといって、まだ福島第一原発の事故が収束せず、事故の原因究明がされていない状態で原子力に戻る選択肢はない。結果として私たちは再生可能エネルギーでやっていくことを前提に考えなければいけない。
 では、現在使用している化石燃料を現状の使い方で、再生可能エネルギーに代替していくことは可能なのだろうか。答えは否である。私たちは今までエネルギーを鷹揚に使ってきていて、無駄遣いが非常に多い。このエネルギーをまず積極的に節約しないといけない。それは生活水準を下げるということではなく、快適性はそのまま、あるいはそれ以上にしてエネルギーは減らせる。日本の建物は断熱性能があまりにも低い。現在の日本の次世代省エネルギー基準のトップクラスであっても、ドイツなどの先進国に比べると3倍〜5倍のエネルギーを使ってしまう。そこを改善するべきだ。断熱性能をあげることで、快適かつだだ漏れで使っていたエネルギーを節約できる。具体的には屋根、壁の断熱材の厚さを増やすこと、窓の性能を向上する必要がある。そうやって器の性能をあげ、太陽の日射や風通しを考え、快適性を確保する。そのうえでエネルギーを化石エネルギーから再生可能エネルギーにシフトしてくのだ。 その実証実験が山形エコハウスである。これは災害時にも効果的であった。 地震後の二日間の停電のなか、暖房器具なしで室温は18℃を維持し続けた。
 再生可能エネルギーは場所を必要とし環境の影響を受ける。山形は風況が良い風力発電の適地もあり、森林資源が豊かでバイオマスエネルギーの活用、太陽電池の設置場所もあり、小水力発電の可能性もある。これらは雇用を増やし、今までは地域外に流出する資本を地域内で流通できるようになる。地方それ自体が再生できる可能性を秘めている。この再生可能エネルギーへのシフトは、農業、産業、IT革命に続く第4の革命を言われる。すぐに始めるべきである。私は東北芸術工科大学での活動をとおして、このエコハウスで集めた知見を地域に還元し、このエネルギーシフトを進めたい。

2012年2月20日月曜日

日本のカタチ傍論

現在、日本のカタチ2050という本を、マエキタさん、馬場さん、山崎さんとで書いていますが、これはその傍論です。
あるとき、馬場さんがおもしろい統計データを持ってきてくれました。これは

http://ja.wikipedia.org/wiki/日本の市の人口順位

というもので、人口のランキングと増減がわかるようなものです。
これは大変興味深い。馬場さんによると、人口が増えている都市は増え続けるし、減っている都市は減り続ける。ということがわかるというものです。そのなかで都市は増えつづけているし、地方は減り続けている。
 一方、2050年というわずか40年後に人口が1億〜8500万人まで減るということがわかっています。
 私はこれに関して、すこし、懐疑的です。すこし、人口減少の速度が低いのではないかと思っています。これを正確に出すと社会保険が成立しなくなりすぎる。なんとか、高い水準を維持するように考えようとしている様に見えるのです。

 さて、人口の話しに戻りましょう。今が2012年1億3000万人ですから、これからすごい勢いで減っていきます。例えば、東京の都市圏の人口が3000万人なのを、維持すると仮定します。そうすると、総人口から3000万人引くと、残りは1億人からなんと少ない場合で7000万人の30%減、あるいは5000万人の50%減まで、一気に減っていくことがわかっています。ですから、地方はどうやって人口の流出を食い止めるかが大きな命題になります。ですが、それは止められていない。ということは、単純に町が維持できなくなっていくことを意味しています。乱暴な言い方をすれば、都市の数が半減する。各県で人口が半減すると、すごいことがおこります。地方の都市、例えば県庁所在地は維持されるとすると、県のなかの田園部には論理的に、人口がなくなるということになっていきます。たとえば、山形県では県の人口が116万人として、それが、58万人にまで、減少する。そうすると、山形25、鶴岡10万人、酒田10万人、米沢10万人とすると、残りは3万人になってしまう。
そういうことが現実的に起こりうる状態になっています。これは結構大変なことですが、特に積極的に、これに抗い、なんとかできるような施策は見受けられません。一例として、山形県をあげましたが、多かれ少なかれ、市町村はそういうことを視野に入れて行動しなければならないと思います。

■地方の都市の規模は半分になる。
■半分の人口になったときに、どういう施策をとるか、今から考えなくては行けない。
■魅力ある都市は生き残り、残りの半分の市区町村はなくなる。

ですから、市区町村は広がっている郊外を整理し自然に戻し、都市部にコンパクトに人口をあつめる施策をとらなくてはいけません。同時に、行政サービス自体をコンパクトにしていかなくてはならない。人口が半分に減ったときに、いまと同じ人数はかけられません。半分でやるにはどうしたらよいか考える。また、40年後に半分にするには今から採用の量をコントロールしなくてはいけない。やらないと確実にギリシャになります。

さて、行政サービスは距離が大きくなればなるほど大変になります。ここで、考えられるのは4つ。

■物理的に都市を縮小し、中心市街地に人が集まる政策を積極的にする。
■インターネットなどを使い、情報の質を上げる。
■人口が減少しないよう、若者を積極的に誘致する。
■行政サービスだけでない、住民参加を積極的に行い、行政の単価をさげつつ、魅力あふれるまちづくりを進める。

最初の中心市街地の整備に関してはいえば、商店街などの商業の問題ではありません。住民がいかに住むか、住宅にとってのサービス、保育園や病院がいかに完備されるかが重要です。そのためには固定資産税の減免や空いている駐車場を住宅に変えていくような施策が必要となります。その結果、商店街が日常の買い回り品などを求める住民のニーズに応えるかたちで復活しますが、それは結果です。

次に、インターネットのリテラシーをあげることが重要です。今の高齢者はいざ知らず、これからの高齢者はこれから、パソコンを習っても決して遅くはありません。
行政サービスを民間の力を合わせて、変えていくことが必要です。

若者の積極誘致は若者がいかに快適に暮らせるかの環境を整備することです。町の中心部に若者という理由で、低家賃で人が暮らせるような施策が大切です。

さまざまな施策は時に甘やかしに見えるかもしれません。ただ、隣の町が同じことをやれば、人口は動いていきます。どこまでするかはそのバランスで見なくては行けないのだと思います。さて、行政のサービスをあげながら、コストを削減することはあまり簡単なことではありません。住民の参加をどう促すかが大きな鍵となってきます。その参加をテーマ型のワークショップで乗り切っているのが、同じ会議のメンバーの山崎亮さんです。ぜひ、彼の「コミュニティデザイン」を読んでみてほしいと思います。

さて、もうすこし、大きな視野に立つと、夕張市のような事例はこれから、数多く起きると考えられます。ここで、必要なのは財務の状況を冷静に判断できるガイドラインが必要だと思われます。破綻する市町村は、大きく破綻すると住民に被害のしわ寄せが行ってしまう。そうならないためのバランスシートがうまく建てられることが重要です。厳しいですが、改善の余地がない場合は、住民の移住も含めて考慮しなくてはいけないと思います。そうしないと、いくらコンパクトを進めても行政サービスが行き渡らなく、隣町が連鎖倒産を起こす危険があります。県や国はそういった行政の空白地帯をどう考えるか考えておく必要があります。

2011年8月7日日曜日

エネシフジャパン


エネルギーシフト勉強会の本ができました。
そこで、「新しいふるさと」と「住宅のエネシフは可能か」を提案しました。


エネシフジャパン
http://www.transworldjapan.co.jp/books/business/post-38.html

 東北の復興を考える際に、エネルギー政策は欠かせない。でも、それは機械が立ち並ぶ装置のようなものではなく、東北の豊かな自然や風景に溶けこんだものになる。小さなコミュニティに合った小さなエネルギーシフトの複合的な組み合わせ。それこそが、復興とともに新しい産業として必要なものである。人口減で20パーセント、技術革新で20パーセントの省エネを前提に東北の自然エネルギーへのシフトを試算する。
 さて、電気と熱はそれぞれの効率が良くなるよう、おのおので考える。電気は2メガワットの風力発電が4660本。東北地方は風が強い。これらは陸上だけでなく、洋上の設置も見込める。住戸それぞれが、自分たちが使う電力量をまかなう太陽電池を設置する。住宅は4キロワット/戸。集合住宅は1キロワット/戸。ほかにも工場、倉庫、農家に設置。また、小中水力、地熱を、ポテンシャル調査の50パーセント程度で導入する。熱に関しては、森林の成長量の50パーセントをバイオマスエネルギーとして暖房、給湯に利用する。これらの担い手は過疎化する農山村や漁村である。彼らが営んできた産業と、太陽や風は親和性があり、復興を支える経済的基盤としても意味を持つ。このようにして、東北はエネルギーシフトを進めていく。

東日本大震災復興助成

「三井物産環境基金2011年度東日本大震災復興助成」に建築・環境デザイン学科の提案が採択

三井物産株式会社(本社:東京都千代田区/社長:飯島彰己 以下三井物産)の三井物産環境基金2011年度東日本大震災復興助成(第1回締切分)において、東北芸術工科大学(山形県山形市/学長:根岸吉太郎)建築・環境デザイン学科が申請した「東北の被災地における地域公共圏のインフラおよびエネルギーシステムの提言-100世帯の集落 復興計画のモデル-」が「活動助成」案件として採択され、2011年7月25日に発表となりました。
三井物産は、東日本大震災復興支援の一環として、三井物産環境基金2011年度東日本大震災復興助成の募集を4月末より開始し、迅速な案件選定を行う為、締切りを3回設定。5月末の第1回締切には、被災地や被災地と連携した団体等から、「活動助成」に77件、「研究助成」に75件、合計152件の応募があり、これらの応募案件について、有識者や当社役職員等による1次審査および案件選定会議、案件審議会での審査を経て、「活動助成」13件、1億6千3百万円、「研究助成」15件、2億2千1百万円、合計28件、3億8千3百万円の助成を決定しています。
本助成に関する社外案件選定委員による総評、応募・助成案件概要、および助成案件の一覧は下記サイトをご覧下さい。
HP:http://www.mitsui.com/jp/ja/release/2011/1194725_1822.html

東北の被災地における地域公共圏のインフラおよびエネルギーシステムの提言-100世帯の集落 復興計画のモデル-
分野:持続可能社会
団体名(所在地):学校法人東北芸術工科大学(山形県)
代表者:建築・環境デザイン学科学科長 竹内 昌義
概要:「自然エネルギーを中心とした新しい集落のかたち」の復興プランを被災地住民とともに作成する。単に元通りにするだけではなく、新たな価値観に基づいた理想と思える未来の姿を描き、自然エネルギーを中心としたエネルギーの転換と産業振興や、コミュニティを維持した新しい集落のかたち、東北の風景を取り戻す活動の実施などのモデルの提示と実践を提案する。

2011年8月2日火曜日

児玉龍彦東大教授の国会陳述の衝撃(続)── 教授と議員との質疑応答

« 児玉龍彦東大教授の国会陳述の衝撃 ── 広島原爆の29.6個分の放射線総量が漏出している!
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菅野芳秀:誰が彼らを守るのか »

山口和之(民主党):民主党の山口和之と申します。福島県出身です。たくさんのお話ありがとうございました。色んな方が色んなことを言うので、実際どこが正しく、どこが安全で、どこが大丈夫で、何が大丈夫かと、まったく国民と同じ目線になっている自分がいます。まず少しずつお聞きしたいんですけども。ひとつとして、今回出ませんでしたけど、ホルミシス効果というのが、話が出たりします。例えば1万人のデータを採って、ある程度の線量の放射線を浴びた場合ですね、逆に健康であるという話があるんです。まず、これを肯定されるか、否定されるかというのをお聞きしたいんですけども。まずは明石先生と児玉先生にお聞きしたい。よろしくお願いします。

児玉龍彦:私どもから見ますと、先ほど申し上げましたように、放射線や何かを当てると、例えばp38というMAPKだとか、NF-κBというシグナル系の分子が動きます。それで、これは短期的には様々な効果をもたらしまして、それを健康にいいとか悪いとかいう議論は様々あります。しかし、こういう状態を長期的に続けますと、我々は慢性炎症と呼んでいる状態になりまして、慢性炎症は例えばガンの前提の条件になったり、様々な病気の原因になるということが、よく知られています。

山口:どうもありがとうございます。そうしますと、たいがいは放射線による害の方が、あるだろうという風にみなさんの意見をそう思いましたけれども、そうしますと、線量の問題が先程らい出ておりました。あとは内部被曝という話が出ておりましたけれども、まずは線量のところで、お聞きしたいんですが。明石先生、それから唐木先生等は、まあ大丈夫だと、安心できますよという話だったんですけれども。児玉先生の方から、ああいうお話があったんですけれども、唐木先生と明石先生の話はデータに基づいて出ていまして。埋もれて、ある程度低いところでは埋もれて、分からないところが出るんでしょうけれども、それ以降については有意な差があって出ているということがありましたけれども、それに対する何かご意見みたいなもの、児玉先生お持ちだったらお聞きしたいんですけれども。

児玉:放射線がですね、人間の遺伝子を傷害します。その時に人間には2万5千の遺伝子がありますが、一定の数のDNA修復に関係する遺伝子、DNAの保護に関わる遺伝子というのがあります。それで普通はこれがやられないとですね、低線量のものは大体問題なく修復されるということが分かっています。

 だけれども、先ほど例えばα線でやられてるP53だとか、それから我々最近ガンゲノムシークエンスというので肝臓ガンや様々なものを遺伝子配列全体を決定して、いわゆるドライバーミューテーションという最初にガンを作っていく方向に起こってしまう変異が、何で起こるかというのを研究しておりますと、例えばp53のような、最初のDNAを守っていたり、そういうところに関わる遺伝子を壊すと、ガンになるということが分かっています。そうしますと、実際には2万5000の遺伝子の中で、どこがやられるかということは、極めて確率論的になってきます。

 ですから一般に分かるのは、統計学的に非常に沢山の人を集めて、例えば後でチェルノブイリの時の甲状腺のように、最初はですね、多分長瀧先生の方がご存知だと思いますが、笹川財団で調べた時に、5万人ぐらいまで調べた時に、「有意な差がない」と言われたんです。ところがですね、それが今になってはコンセンサスとして「6000人の甲状腺ガンと15人の死亡例が生まれている」という風に変わってきています。

 私もともとですね、こうした問題に興味を持ちましたのは、自分はコレステロールの方が専門でして、コレステロールの薬を作る時にも、たくさんの論争がありました。それで私は医学者として今一番感じておりますのは、どこの線量が安全かという議論と、国の政治的な関わり方を分けていただいて、国は、要するにコレステロール論争の時に一番大事だったのは、「コレステロールを下げる薬をやって心筋梗塞が減るかどうか」という問題です。それで今日の厚生委員会でも考えていただきたいのは、学問論争に対して厚生委員会で結論を出したり考えたりする必要は、私はないと思っています。

 国民の健康を守るために、どういうことができるかという時に、まずセシウム137というのは、自然界には1945年以前に存在していないものです。原発と原爆で生まれて、それが1960年代の初めに水爆実験によってピークになったものであります。その時に猿橋勝子さんという女性研究者が、海水のセシウム濃度が100倍になっているということを、微量線量計で確認して、これでアメリカへ行って、その公開実験というのをフォルサム博士とやって、これが大気圏内の核実験禁止の大きな学問的根拠になりました。その後セシウムはずっと減ってきていたのが、またそれを遥かに倍する量に今上がろうとしている時であります。そうしますと、その線量議論の問題というよりも、元来自然界にないセシウム137というのが膨大にまかれて、ガンマカウンターで簡単に分かるような量に散らばっている。しかもそれが広島原爆の20倍の量まかれているという事態に対して、国土を守る立場から是非積極的な対応をお願いしたいというのが、基本的なお願いです。

山口:どうもありがとうございました。結論付けるつもりはないですし、県民、国民はどうしてたかというと、一番不安な、一番安全、一番危険なところを聞いて動いているというのが、今実態ではないでしょうか。だから、安全だと思って聞いていらっしゃる方もいらっしゃいますし、中には線量が少ないところであっても子どもを連れて県外に避難されてる方も沢山いらっしゃると思います。やはり不安でしょうがないと思うんですけれども。避難区域の住民が戻れる条件、いま避難区域になってますけれども、先生方で「こういう条件にしたら、避難区域に戻れるだろう」「今でも十分戻れるよ」という場合もあるでしょうし、先生方によって違うでしょうが、避難区域に戻れる条件を少し教えていただきたいんですが。ちょっと時間がなくてですね、聞きたいこと沢山あるので、簡潔にちょっといただければと思うんですけれども。どなたでも結構です。

児玉:私が一番申し上げたいのはですね、住民が戻る気になるのは、行政なり何なりが一生懸命測定して、除染している地域です。ですから測定も除染もなければ、「安全だ」「不安だ」と言われても、信頼できるところがありません。ですから、「この数値が安全」「この数値がどう」ということではなしに、行政の仕組みが一生懸命測定をして、その測定に最新鋭の機械を投じて、除染に最新鋭の技術をもって、そのために全力でやってる自治体が、一番戻るのに安心だと思います。

山口:どうもありがとうございました。もしですね、牛の基準であったり、お米、これから作物つくっていかなきゃならないし、果物の基準とかもありますけれども、今は厚生労働省で基準を作って、「これぐらい食べても5ミリシーベルト超えなければ大丈夫ですよ」という、先ほどお話があったかもしれませんけれども、農家で米を作るとかですね、果物を作るだとか、何かそういった作る段階での基準などはございますでしょうか。どなたかお願いできますでしょうか。

児玉:入り口の方で基準を決めるというのは、非常に厳しいと思っています。生物学的濃縮というのは、様々な元素が身体に入ると、トランスポーターとか結合タンパクというので、極めて特殊な集積の仕方をしますので。ですから、出てきた農産物をきちんと見るという仕組みを、徹底的に作っていかなくてはならないと思います。そうするとですね、やっぱりラインのような格好で、どんどんイメージとして、農産物が、量がチェックできるような仕組みが実際にはあるんですが、まだほとんどこういうものの測定に使われていませんので、そういうものを全国の産地に緊急に整備していかないと、今回の稲ワラのようにやっぱり想定外の場所での濃縮事件というのは、自然界では山ほど起こります。ですからやっぱり、出口の食物の出ていくところでのチェックというのを、緊急に物凄く良くするというのが大事になると思います。

吉野正芳(自民党):現地でもですね、各小学校単位ごとに、それぞれの専門家の先生方をお招きして、放射線の勉強会、本当に参加の数は何百人、小学校単位ですから何百人という方が、来るんですけども、何回やっても同じなんですね。ですから、これは本当にどうすれば不安を取り除くことができるのかなと。例えば私はですね、科学的なことでいくら説明しても、理解しても、自分の頭で理解しても、身体がついていかないという。こういう状況下に置かれていますので、もうその方は、避難できる方は避難してください。そしてそれに対する支援をしていく。避難できない方は、きちんと家庭での防護策と言いますか、それを我々政治の方はやるべきだなと私自身は思っているんですけれども、その辺はいかがでしょうか。あの、熱い児玉先生。

児玉:要するにあの、信頼感というのは言葉で説明を聞いて生まれるんではない、と思います。私も毎週南相馬に行っていますが、南相馬の例えば、方たちが本当に汚染してる学校や何かを案内してくれるのは、一回目じゃやっぱりないんですよね。そのだから、支援に来ている人がただ一回だけ来て帰っていってしまうのは、かえって問題をひどくするだけで、やっぱり本当に持続的にやっていこうとすると、一緒に測って一緒に考えて除染していく、避難されたい方は避難を応援する。そういうのがすごく大事ではないかと思っています。

 それで南相馬に行って、私どもが最初に言われたのは、やっぱりそのさっき言った、「線量の低いところから高いところへ、スクールバスで子どもが、千人超え移動させられている」ということで。それで実際に地域を見ても、ひとつの学校を見ても、さっきから「何ミリシーベルトだったら安全ですか?」という議論は、私現実味がないと思うのは、例えば2マイクロシーベルトの学校を測っていても、1カ所に行くと33マイクロシーベルトなんです。ですから、その時に一体何ミリシーベルトをその土地とするかという問題が出てきてしまいますから、やっぱり高いところがあったら、「必ず刈り取っていきますよ」と、「測って一緒にやっていきますよ」と、「不安があったら相談に乗りますよ」と、「農産物があったら最新鋭の科学機器を集めて、最高の検査メーカーが来てやりますよ」というような体制がない限り、安心できないというのが当たり前ではないかと。ですから今もとめられているのは、最高の施策が福島県民に与えられるように、国会で是非考えていただきたいということであります。

高橋千鶴子(日本共産党):ありがとうございました。最後に児玉参考人に伺いたいんですけれども、まさしく今日、内部被曝の問題がずいぶん話題になりました。また遠距離被曝ということも、いま沢田先生からだいぶ指摘されましたので、そういう観点でずっと除染作業もやってらっしゃる先生から一言うかがいたいと思います。

児玉:私、放射線取扱者に1977年になりまして、1995年から放射線取扱主任として、除染と規制に関わっております。それで今まで科学技術庁告示、平成12年から我々がやらされていたことを、ひとつだけご報告しておきます。それは、例えば妊娠可能な女子については、第5条4項で内部被曝を1ミリシーベルト以下にする。それから、第6条第3項、妊娠中である女子の腹部表面については、前項第4号に規定する期間につき、2ミリシーベルト。これを規制されてこの規制を守るべく、30年やって参りました。ところが、福島原発の事故で、広島原爆20個分の放射線が撒き散らされた途端に、このような基準がすべて反故にされている。

 先ほど福島県の議員から「どのようにしたら安心か」というご質問がありました。私は安全に関しては、基準を決めたら、危機になったら、それを変えていく格好では、ダメだと思います。いま今年できないかもしれないけれども、来年までにその基準に持っていく、再来年までにはこうするとうことがなければ、住民が安心できるわけがないではありませんか。そのためには最初から申し上げている通り、広島原爆20個分の、天然にないセシウム137を撒き散らした東電と政府の施策を反省し、これを減らすため全力を挙げる以外に安心できる解決などありえないのです。そのことを抜きにして、どこが安全だという議論をいくらやっても、国民は絶対に信用しません。

阿部知子(社会民主党):引き続いて、牛のセシウム汚染をはじめとして、今朝でしたか、腐葉土にもやはりかなり高濃度のセシウムがあるということで、単に牛だけでなく、及ぼす影響は全食品にかかわってきていると思います。また海への汚染もありますので、今後魚への汚染ということも避けて通れないと思います。その中で先ほど唐木委員のお示しいただきました参考資料の中にですね、例えば牛についてですけれども、全量、全体、全個体検査や抜き取り検査は、かなりこれは困難というか、不適切であるというような表現でありましたが、これも2週間ほど前、NHKスペシャルでやっておりましたベラルーシでの取り組みは、チェルノブイリ事故25年をたっても、各学校で子どもたちのミルクや野菜の放射性レベルを点検するということでございました。

 やはり私はここまで食品汚染がひろがってきた場合には、やはりなるべく口に入る身近なところで検査するという体制、それがどこまで身近にやれるかはまたあると思いますが、そうした考え方に立つことが重要ではないかと思いますが、この点について唐木参考人と、あと児玉参考人は先ほどラインの測定でずっとフォローしていくというような技術も、我が国の現状においては可能ではないかという風なお話でしたので、もう少しご披瀝をいただきたいと、各々お願いいたします。

児玉:今おそらくやられているのは、かなり旧式なやり方なんですが、ゲルマニウム半導体というので、周囲を6センチぐらいの鉛で遮蔽した中にモノを置いてやられています。それで今日、半導体の検知器というのは、かなり多数の種類が改良されておりまして、私が最先端研究支援でやっておりますのは、PETという機械でやっているのですが、PETで検出する時には内視鏡の先でも検出できるぐらいの感度の高いものを開発しております。それで、そういうのを集めていて、今やられているのはむしろイメージングに変えている。ですから、ゲルマニウムの半導体というのはスペクトラムを出して、長いスペクトラムを全部見るんですが、例えばセシウムに絞って、この線量を見るんであれば、半導体検知器の検出感度が今ずっと良くなってますから、画像型にすることが簡単にできています。

 それで、例えばその画像型のひとつのイメージみたいなものは、米軍から供与されてヘリコプターに載って地上の汚染(調査)をやるのに、いま色んなところで、今日あたりは茨城県をやってると思いますが、検知器で地上を写すようなものが、ずっとやられております。それで農産物を沢山やろうとする場合には、ライン化したところで多数のものをできる仕組みをやらなくてはなりませんから、イメージングの技術を基礎にして、半導体を集めたようなもののセンターを沢山つくって、流れ作業的に沢山やれるようにして、その中でハネるものをどんどんイメージで、こう画像上で、これが高いと出たらハネていくような仕組みを、これは既存の技術ですぐできますものですから、そういうものを全力を挙げてやっていただきたいと思っております。これを生産地にかなりのところ作る必要があると思っています。

阿部:私もいま先生が言っていただいたように科学は謙虚にあらねばならないと思います。そして先ほど児玉先生のお話で、チェルノブイリ膀胱炎と呼ばれるものが20数年たって初めて疫学的にも有意に出てくるということを見ると、やはり実は甲状腺癌も子どもの場合もそうでしたが、最初否定されておりましたから、きちんと科学はいつもその可能性を否定せずに向き合うと。最後に児玉先生にひとつお願いしたいと思いますが、アイソトープセンターこれは全国にございますが、これを今回の除染に活躍させるために何が必要かお願いします。

児玉:5月に全国のアイソトープ総合センター会議というものがありまして、そこで色いろ議論をしていた時に、文科省の放射線規制室の方が、おっしゃってたのは、「福島原発以来のRIは、RIではない」と。「我々は国民の健康に責任を持つという仕事をやっているのではなくて、法律に決められた放射線取扱者を規制することが仕事だ」という風におっしゃっていました。それで、ある面で私非常に違和感を感じたんですが、もう一方では例えば文科省の法律の規制室の方は、従来の規制に従ってやらざるをえない。それで、高い線量のものが少量あるということに対応した法律体系はありますが、低い線量のものが膨大にあるという、それをどう除染していくかということに関する法律がほとんどなくて、今も汚泥問題、その他すべて問題になっているのは、ここであります。それで、しかしながら現在の全国のアイソトープ総合センターなんかは、旧来の法的規制のまんまで何らのこれらの組織、例えば先ほどゲルマニウムの機械が足りないというお話がありましたが、そんなものは全国に沢山あります。ところが、そこへの持ち込み、持ち込んだ廃棄物の引き取り、こういうのが法律的にまったくない。

 だから今も東大のアイソトープセンターでやっているのは全部違法行為だと申し上げました。この場合にはセンター長である私と専任教官と事務主任の上で審査委員会を設けて、内部でチェックして超法規行為を勝手にやっているというのが現状であります。それでそういう法律を一刻も早く変えて、測定と除染というのに是非立ち上がっていただきたい。それなくして親の安心もないし、しかも先ほどから長瀧先生たちがおっしゃっている原爆型の放射能の常識というのは、これは原発型の常識の場合にはまったく違います。それから先ほどおっしゃいました、長瀧先生のおっしゃった一過性に核医学で治療をやるというのも、これも形式が違います。我々たとえば抗体にイットリウムをくっつけて打つと、ゼバリンという医薬がありますが、あれは一過性にもかなりの障害を起こしますが、それでもガン細胞をやっつけるためにいいからやっているということであって、正常者にこれをやることは、とても許されない。無理なものであります。

 それで、ですから私が申し上げたいのは、放射線総量の全体量をいかに減らすか、これは要するに数十兆円かかるものであり、世界最新鋭の測定技術と最新鋭の除染技術をただちに始めないと、国の政策としてまったくおかしなことになるんです。いま我々がやっている、たとえば幼稚園で除染します。除染して高圧洗浄器でやりますと、側溝に入ります。側溝をきれいにしています。しかしその側溝の水はどこへ行くかというと、下流の農業用水になっています。それでイタイイタイ病の時の経験は、カドミウムの除染を下手にやりますと、2次被害を引き起こします。ですから国の政策として国民の健康を守るためには、総量の問題をまず考えてください。緊急避難とひとつ、総量の問題ふたつ、これを是非議論よろしくお願いします。

柿澤未途(みんなの党):最後に一点だけ。児玉参考人におうかがいをしたいと思います。細野原発担当大臣が、すでに避難区域の解除と帰宅ということを、就任早々おっしゃられて、今度も無人ヘリを飛ばして現地の調査を行って、場合によっては早期に解除して住民帰ってもらおうと、こういう話が出てきています。しかしチェルノブイリの強制移住レベルを上回るような高濃度の汚染地域が、東京23区全体を上回る800平方キロメートルに広がっている中で、今の状況でこの非難区域を解除するということが、正当化されうるのかということを、児玉参考人にご見解としておうかがいをしたいと思います。

児玉:まずですね、20キロ、30キロの地域というのは、非常にまだら状になっています。それで南相馬、私が一番よく存じております南相馬の場合ですと、南北ではなくて東西に線量が違います。それで飯館村に近い方は20ミリシーベルト以上で、現在避難が開始されている地域。それでこちらの方は、海側の方は、それよりもずっと線量が低いところがあります。それでこうした場合には、自治体が判断した方が、今は20キロ、30キロ圏は、病院は休診、学校は休校ということが、一応指示となっております。それをやっぱり学校を開いて、一番低い線量のところで子どもが授業できるようにするとか、そういう判断は、やっぱり自治体の判断でできるようにした方がいいと思います。ですから今の線引きの問題という話よりも、実際にいかに子どもの被曝を減らしたり、地域を復興していくかという問題がまず1個あります。

 ただそこでもうひとつの問題は、地元で聞きますと、商工会や何かから、今は強制避難ですから補償が出ています。だけれども避難区域が解除されたら、補償がなくなってしまうということで、実際に私が南相馬に行っている間も、住民の中で非常に大きな意見の違いが生まれていて、見ていてとてもいたたまれない思いがいたしました。それで是非避難の問題と、それから補償の問題を分けて、それで先ほどおっしゃった避難の解除というのは、要するにどういう問題があるかというと、高い線量のところはこれは除染しないと非常に危険です。

 それで今そういう問題になっているのは主に年20ミリシーベルト以上の被曝を受けてしまう地域であると思いますから、そこに関しては引き続き強制的な避難が必要であると思っていますし、ここの地域をどう除染していくかということは、東電なり我々科学者なり日本政府がとてつもない十字架を背負っていると思います。そのことを住民の判断だけに押し付けるのは、とても難しい問題があると思っておりまして、20ミリシーベルト以上の地域に関しましては、やはり是非とも国でここの避難している人たちの生活の保障と、それから除染の努力をどのように詰めるかという見通しを、本当に必死に考えないといけないと思っています。

 それで20キロから30キロという現状の同心円が、それを正確に示しているかと言うと、今はそうではなくてむしろ地域復興の妨げになっている面がありますから、地元自治体との相談の上で、そこの地域のさまざまな行政、生活上の問題に関しては、子どもやお母さんが一番安心できるようなものにするということを一刻も早くやっていただきたい。それで細野大臣はある面ではそういう意見を反映している面があると思います。もう一方では、それを補償問題とどういう風に結びつけるかという議論がないと、やはりこれはもう一方で非常に大変な問題が生まれてしまいますので、やはり今は強制避難でないと補償しないとか、住民が被害を立証できないと補償しないというような格好は、もうマズいんではないかと私は思っております。▲

2011年7月8日金曜日

東日本の復興とエネルギー政策

これはある新聞に提出した提言である。刻一刻と事態はかわる。これをここに発表してよいのかわからないが、期限切れになってしまう前に、すこしでも多くの人に読んでほしいと思ったので転載する。
5月に書いた文章だが、基本的な内容は今のところ変わっていない。

 私は横浜で設計事務所を経営しながら、東北の大学で建築を教えている。毎週、大学のある山形と事務所のある横浜を行き来している。そうすると否応なく日本の中心である東京と地方が抱えるそれぞれの問題が見えてくる。そして、地方で起こっている様々な問題は東京でも将来起こりうる。現在、地方は流出人口が多く、急ピッチで人口減少、高齢化が進んでいる。いずれ、東京も同じようになる。その点で日本がどうなっていくのかとても気になる。2004年に、人口はピークを向かえ、すでに減少し始めている。2050年には8500万人ほどに減り、現在の65%程度となる。そのような状況のなかで、今回の震災は起こった。これから復興の絵を描くときにも、この前提は変わらない。日本が将来どうして行くべきか、どこへ向かうべきか論じていきたい。

■エコロジーについて
 いまから3年前、2008年。洞爺湖サミットで福田ビジョンが発表された。日本も低炭素社会を目指そうというものである。世間話をする延長で地球環境やエネルギー問題を専門とする同僚に「低炭素社会になったら、建築はどう変わるのか。」を聞いてみた。答えは至って簡単に「見た目の問題じゃなく、エネルギーの問題として、そりゃもう全然変わります。」との答え。まだ、ピンとこない。続けて「今の住宅は、どんどんエネルギーを使って、バンバン二酸化炭素を出しているけど、そんなんじゃ、石油がいくらあっても足らない。根本的に変わっていくんです。」「ドイツとかオーストリアではエコロジーを意識しながら、エネルギーをほとんど使わないかっこいい建物が建ってますよ。」と。また「日本にも、暖房がいらないような家を建てている建築家もいますよ。」と付け加えられた。
 そこで早速、秋田県能代の建築家のアトリエやオーストリアの最先端の住宅やプラントを見学に行った。秋田で見たのは、今にも雪が降りそうな曇天の冬のさなか、30坪程度のアトリエが小さな石油ストーブで十分に暖かくなっていた。十分な断熱がされ、エネルギーの出入りが少ないので、快適になるのだという。断熱材の厚さは20〜30cm。通常の約4〜5倍の量である。建築家の西方里美さんから「住宅は器の性能が大事である。」、「熱に関して、建築家はもっとちゃんと科学的に勉強しなくてはいけない。」ということを習う。家に大きな吹き抜けがあると、二階の気温が高く、一階の気温が低いということは当然のことだと思っていたが、それは間違いだと言う。もし、家が十分に断熱され内部と外部に熱のやり取りがなければ、そんな対流は起きない。家全体が一定温度になるということまで教わった。

■オーストリアの現在
 次に訪れたのはオーストリア。日本ではチロル地方などアルプスの沿いに国が位置する。そこでは何件かの住宅や地域を訪ねた。端正な木造の建物が美しい。美しいばかりではなく、暖房もバイオマスエネルギーを上手に使っている。オーストリアは石油ショックの後、徐々に対応してきた。ロシアからの天然ガスのパイプラインが政治的な問題でエネルギー危機になる可能性もある。そこで、森林に目を付け、バイオマスエネルギーの普及を進めた。いまでは、バイオマスエネルギーが全体のエネルギーの30%に近づいている。国からの政策的な後押しがあり民間でも導入しやすい。特に融資制度が充実していて、設備の半分を国が補助し、そのまた半分を銀行が融資し、個人が取り組む。実に四分の一程度で地域冷暖房が導入できる。もちろん、融資を返済した後は、個人の財産となる。その結果、個人のモチベーションはあがり普及が加速度化する。彼らに聞くと、「バイオマスの方が安いから、そっちをつかうよ。」とにべもない。オーストリアの状況は、林業が発達していて大きな製材所も数多くある。その廃棄物としてのエネルギーなので、当然コストは抑えられる。ショックだったのはボイラはオーストリア製なのだが、そこで使われているコンピュータ本体は日本製だ。デバイスをつくるのがうまくても、利用しなければ意味がない。また、地域暖房などでも、給湯管のパイプラインなどの道路の敷設で、日本では多くの費用がかかるが、地元の人は、特に誰に頼むではではなく、自らの手で敷設しているという。エネルギーシフトを成功させているオーストリアの社会と全然進まない日本の社会。森が多い点でも日本とあまり変わらない、第2、3次産業が盛んな点でも日本と産業構造的には似ている。オーストリアはここ10年ほどで大きく変わったという。

■木の可能性。 二酸化炭素の固定化、 エネルギー、森の再生。
 さて、最先端の住宅の材料はなんであろうか。答えは至ってシンプル。木造である。第一に木自体が二酸化炭素を固定化することで、エコロジカルである。
木はその生きている間、光合成をして二酸化炭素をその体内に固定化する。成長量より少なく木を切れば、二酸化炭素を固定化した木をどんどん増やしていける。また、他の材料と比べてもエコロジカルである。鉄やコンクリートは製造するときに大量のエネルギーが必要だ。鉄は溶鉱炉の熱、セメントは石灰岩を乾燥させるために大量の熱を使う。しかし、木は材料の運搬エネルギーがかかるだけだ。また木はエネルギーとして使ってもエコロジカルである。いわゆる薪である。今風に言い換えるとバイオマスエネルギーと呼ぶ。(ちなみに日本におけるバイオマスエネルギーは穀物由来ではなく、ほとんどが木材だ。)これらはほとんど二酸化炭素を出していないと計算していい。木を燃やすと二酸化炭素はでるが、木の生涯が貯めた二酸化炭素を放出していると考えられるので、その二酸化炭素は排出量として数えなくてよい。以上の3点から、木をエネルギーとしても使うべきだ。日本は世界でも有数の木材資源が豊かな国である。国土における森林率は67%(2002年)、岩手、秋田、山形、福島の4県は70%を超える。この森林率はバイオマスエネルギーの利用が盛んなフィンランド、スウェーデンに匹敵する。その森林は国内で外国産の安い材料が流通したのであまり手が付けられていない。むしろ、間伐など適切なメンテナンスがされていないくて荒れ放題である。森を再生するために手を入れなくてはいけない。

■日本の住宅
 日本では徒然草、吉田兼好の「住まいは夏を旨とすべし。」という教えが頑なに信じられている。冬は我慢できても、夏は我慢できないことを端的に言い表したものだが冷暖房がまったくない鎌倉時代の話である。現代はもちろん冷暖房があり室内の温度をコントロールできる。でも、住まいの器は昔の考え方のままである。それでは、エネルギーが無駄使いになってしまう。あまりにもったいない。ちょうど、日本の自動車がアメリカの自動車と競争をしていた時代を思い出してほしい。当時、日本車は大型だったアメリカ車に対抗し、小型車でアメリカ車に挑んだ。アメリカ車は大きく、重く、大量のガソリンを必要とした。そこに、日本車が小さく、軽く、燃費のよかった。徐々によさが認められ、アメリカ人も小さく燃費のよい日本車を求めるようになった。日本のメーカーは車を小さくすることで、必然的に燃費が向上しアメリカ車に勝ったのである。今の日本の住宅は、このときのアメリカ車に似ている。断熱性が低いので、冷暖房器具の能力を上げて、対応している。当然、エネルギーは無駄使い、冬には必要な部屋しか暖房しないので室内の各部屋での温度差が大きくヒートショックの原因にもなる。まるで、大きい車体に大型のエンジンを積んでいたアメリカ車とそっくりである。これらの話は実は沖縄以外、九州から北海道まで日本全国共通の問題である。どちらの地方も、冬になると最低気温は0度近く、そこから20度まで暖めるのにある程度のエネルギーを使うからだ。

■エコハウス
そういう状況のなか、大学の敷地に、エコハウスを建てる機会が得られた。もろもろ研究したことも踏まえて、3つの特徴のある建物とした。
1、山形の木でつくること
2、徹底した省エネルギー
3、自然エネルギーの活用
 前述とおり、木でつくることはエコハウスの第一歩である。特に仕上材は経年変化で狂うことを嫌って、様々なプラスチックや変化の少ない工業製品で置き換えられているが、積極的に木でつくることとした。また、エネルギーの無駄使いでは意味がない。徹底した省エネルギーとするために、断熱材を屋根にグラスウール400㎜、壁に300㎜設置した。開口部はトリプルガラスが嵌った木のサッシである。これらのことを対応すると、断熱性能があがって、エネルギーのロスが極端に抑えられる。木材豊かな東北の地なので、バイオマスと太陽光発電を併用させた。スペックは太陽電池 5kW、太陽熱温水器 30㎡登載。熱源としてペレットボイラを設置し、太陽熱温水器の水と混合して、暖房・給湯を行っている。
竣工して1年、年間を通じて売電量が多く、経済的な収支でもプラスとなっている。したがって、環境に対して、二酸化炭素を排出しないカーボンニュートラル(化石燃料を使わない)であるばかりではなく、あること自体でエネルギーを産んでいくプラスエネルギーの家であると考えられる。今回の震災時、山形ではまる2日間停電した。しかし、優れた断熱性能があったおかげで、電気が止まっても、その間、室温が18度から下がらなかった。断熱性能はた単なる省エネルギーだけではなく、停電などの災害にも強い。
 ヨーロッパでは2021年以降、すべての新築の工事ではカーボンニュートラルでなければならない。このエコハウスは法規制に準拠する。ヨーロッパでは標準だ。日本にはまず省エネルギーに関して義務化する法律はまだない。ただ、ストックが余り、業界が縮小していく建築分野ではメーカーやビルダーの間での性能の差異化が着々と進んでいる。
 高断熱の実現のために断熱材のコスト増は大きな問題ではない。建材の分野で、日本がおくれているのはサッシなどの建具周りの分野である。この気密がたらず、アルミサッシによる熱損失が大きい。メーカーによると今までは需要がないので対応していないと応える。法律などが整備されれば、たちまち高性能なサッシが出回るだろう。住宅の省エネルギー化により、電力量はかなり減らしていくことができる。一般の住宅だけではなく、公共建築の省エネルギー化もこれから必要な政策であろう。現在、日本の消費電力量のなかで家庭用が28.2%、業務用が29%となっている。住宅やオフィスのエネルギー節約は電力量の節約という点で効果的だ。一方、製造業(42.8%)の省エネルギーについては、よりい一層企業努力を促すために、ピークの時間をずらすことができることを促すような料金体系を望みたい。そうすることで、ピーク時の消費量が抑えられ、全体の設備のキャパシティ自体を抑えられる。

■大学のある山形の状況
 地方の都市がそうであるように、中心市街地の活性化の問題がある。郊外にショッピングセンターができることにより、中心市街地が空洞化する。そこで、大学の同僚や学生たちと残されている古い蔵の利活用をするプロジェクトを始めた。そうすると、一様に見えていた「まち」がいろいろな状態であることに気づく。単純に大型ショッピングセンターのまねをしようとしても太刀打ちできない。でも、独自性のある個性的なものは確実に人を集める。また、行政の縦割りも見えてくる。ある日のこと。「都市と地方を結びつけるために、農作物を中心市街地に集めて、観光客に振る舞ってはどうか。」というテーマのもと活動しようとしたが、まるでうまく行かない。農は農林課、中心市街地は商工課、都市との交流は観光課、実はセクションに分かれていて、どの課が担当するか見えてこない。本来、横断的なセクションがあるべきなのに、なかなかそうはなっていない。

■日本の将来
 日本が人口を減らしていきながら、豊かさを感じるためには、さまざまな価値観を変えていかなければいけないと思う。日本全体のGDPの伸びを競うのではなく、個人の所得の伸びを考えればよい。65%に減っていく人口に対して、GDPの伸びを論じること自体おかしい。人口減少社会において、今ある資産は有効に使われなければならない。たとえば、建築。既に十分な床面積を供給している。床の多寡ではなく、性能を充実化させるところに成長の余地がある。また、新しいエネルギー産業を起こさなくてはいけない。それは中央集権的なものではなく、分散型である程度、手間のかかるものであっていい。そうやって、雇用を産み出していく。それらはできるだけ今あるものをどう利用するかという考え方が必要だ。従来のように加工貿易型でモノを生み出すのではなく、技術そのものが価値になるような分野を開拓しなければならない。その代表的な例が自然エネルギーによる産業である。それらは分散型で地域に対して有効な産業となる。自然エネルギーには現実的なものとして、太陽光発電、風力発電、バイオマスエネルギーによる熱供給および発電などがある。まず、日本全体の問題として、エネルギーをどう考えるのかを決めていかなくてはいけない。現状と同じ量を今までと同じように使い続けることはどうみても合理的には思えない。技術革新をしながら節電をして、トータルの量を減らす努力をする。日本の自動車の燃費が向上したように、様々な分野で徹底して行う。また、人口の減少に合わせて、必要なエネルギー自体を抑えていくこともひとつの提案であろう。そのために現在どこでどのくらいのエネルギーが使われているか「見える化」する必要がある。そして、数値目標化し、具体的に電力のあり方が議論できるようにするべきである。また、お互いの電力を融通できるように、送電網を国有化し、日本版スマートグリッドを早急に押し進める必要がある。もちろん、周波数の問題は真っ先に取り組むべき課題である。加えて、送電網の国有化とともに、自然エネルギーへのシフトを積極的に進める政策を行う必要がある。
 さて、原子力発電に関して安全の確認を行いながら、しばらくは使い続ける必要があるだろう。しかし、そこでの安全や管理は今までと同じであってはならない。福島の事故は今の枠組みで起こってしまった。やはりそこに改善の余地は大いにある。安全基準の見直し、再確認に関しての第三者機関の設置も重要と考える。
 そういった長期的な日本の国としてのあり方、エネルギーのあり方を論じながら東日本の復興計画を位置づけたい。国が目指すべき姿、そのためのリーディングプロジェクトとしての復興計画である。

■沿岸型(三陸の市町村)
いずれの復興も人口の減少エリアの場合、ただ単に補償しても、人口が減る限り、町や村の将来はない。たとえ地震や津波がなかったとしても都市の統廃合が進んでいただろう。それを前提として、地元を活性化するには、人々が移り住みたくなるような魅力あふれる産業が必要だ。これが自然エネルギー特区によるエネルギー産業であり、第一次産業である。
 エネルギーの種類は、太陽光発電、太陽熱エネルギー、風力エネルギー、バイオマスエネルギーである。津波に襲われた地域では、あるコンセンサスが必要だ。そこにとどまるか移住するかである。私は後者を薦めたい。だが、どうしても沿岸部に残さざるをえない施設がある。その場合、 ある区間ごとに避難用のタワーをつくり、安全を確保したい。おそらくコンクリート造4階建て。一、二階は波が来ても抵抗がないように柱だけにして、その上に仮設的な事務所などをつくる。
 一方で、住民が住むのは高台を切り開き、コミュニティごと移住する。大事なのはコミュニティ全体でという点。阪神淡路大震災では、高齢者を優先的に入居させたことでコミュニティが分断し、孤立化した高齢者が孤独死していったことを忘れてはならない。
 そこでは、様々なエネルギープラントのテストを行い、住民はモニターとなる。建築は高断熱高気密として、断熱性能をあげ、少ないエネルギーでランニングできるような木造の低層建てとする。エネルギーを多く使わないライフスタイルをめざす。ここは、エネルギーに対して完全自立型をめざすので、現行法規の規制を超えた特区として、新しい実験の場としつつ、住民には快適で安価な生活を保証する。いくつかのエネルギーを混在させ、将来に向かって最適化していくようなシステムとする。電気は太陽光発電と燃料電池の併用。燃料電池は従来だと多くのお湯ができてしまうが、それとバイオマスのボイラを併用して、各戸へ地域暖房を敷設して共同でつかう給湯システムとする。また、風力発電の安定化につとめるため、蓄電池の性能実験を行う。同じ岩手県の葛巻町などは電力自給率が100%を超えている。こういった取り組みを、復興支援として後押しするのだ。
 
■都市型(仙台、石巻)
ここでも同じような展開が考えられるが、特区のあり方として、住宅が集合した状態でのエネルギーのあり方を考えるのが望ましい。集合住宅はエネルギー的には、効率的になるのでより有利になる。これは、東京などの都市部への応用を前提に考えていく。高い断熱性はもちろんのこと、自然エネルギーを積極的に使う。特に給湯やゴミ焼却などの都市的な生活資源をエネルギーの材料として扱う。建物は3〜4層の中層として、屋根には太陽電池を設置する。化石燃料とバイオマスのハイブリッドシステムを利用する。
また、電気料金の払い方を住民の意志によって、発電所の形式によって選択できるようにする。

■原発避難型(福島の市町村)
住民が現地に戻れるのが最良の方法だと思うが現状で直ちには判断できない。財産の保全は当然として、コミュニティを保ちながらの、一時的な避難場所を県外あるいは県内に探してみる可能性はないだろうか。そこではもちろん農業や林業に携わりながら、自然エネルギーのプロジェクトに参加する。

いままで、エネルギーのことを中心に論じてきたが、忘れてはいけないことがある。それは日本人の心、自然に対する世界観である。日本人は自然に対して、四季の違いを意識し、その景色を愛してきた。そういう風景は保全されるべきである。一方、ロードサイドの郊外型の店舗の看板など、本来ないほうがいいものが多くある。この復興にあたって、この沿岸部の風景をそういった視点でコントロールしたら良い。理由は2つある。一つは外部的な視点から。これらの復興プロジェクトは、リーディングプロジェクトであることから、それ自体を観光資源としたい。地震や津波のことを考え、これからの日本のプロジェクトの象徴的存在としたい。もう一つは内的な「こころ」の問題である。看板や建物の景観は、原則経済活動を妨げない範囲で行われてきた。ただ、震災によって本当にあるべき姿は何か常に考えさせられる。経済活動を推し進め、突き詰めた結果が地震を自然災害としてだけではなく、人災も加わった複合災害にしているように思えて仕方がない。ここはひとつ、本来あるべき姿、景観、景色を考えるべきではなかろうか。
 
以上、私のエネルギー政策は、自然エネルギーへのシフトを前提に、そのリーディングプロジェクトとして、震災の復興を考えた。現在の日本を復興させていく方法はそれほど簡単ではない。しかし、国がある方向に向かっていくためには、国民すべてが納得できるようなプランが必要だ。エネルギーに対して技術で答えていくことが日本の採るべき道だと思う。