2012年7月9日月曜日

日本のエネルギー

■エネルギーの未来 

日本でのエネルギーに対する理解が一般的ではないのでここに書きます。 普段はtwitterなどの短い投稿が多いのですが、さすがに短すぎるのでまとめて書きます。

 ■まず、私の専門は建築なのですが、全般的なことから書きます。 

日本のエネルギー自給率は何%でしょう?

 ついで、スウェーデン、ドイツ、オーストリアでは何%でしょうか?


 答えは日本は4%、スウェーデンは40%、ドイツは20%、オーストリアも30%です。 日本はおもに、石油や原油などの化石エネルギーに頼っていて、化石エネルギーはほぼ100%輸入のものです。また、原子力もウランは輸入に頼っています。食料自給率が40%でも問題になっていますが、エネルギーはもっと深刻です。ですから、この問題を大きく考えなくてはいけない。311まで、日本はその切り札として、原子力を50%まで引き上げる計画を立てていました。(あくまで、311までの話しです。) さて、スウェーデンは水力が盛ん、ドイツは石炭火力が盛ん、オーストリアも同様ですが、最近は木材を燃料としたバイオマスが盛んで、その自給率をどんどん引き上げています。これらの国は、石油ショックを経て、ロシアのパイプラインに頼るエネルギーの問題を安全保障の問題ととらえ、自国の資源をどう活用するか検討を重ね、社会を変革してきました。そうしてエネルギーの自給率をあげていきました。これらの国は自国の森林面積が多く、その資源を活用しています。林業を振興し、そこで家具や家といった製品をつくりながら、そこで出たゴミを資源として活用することを進めました。これがヨーロッパ型のバイオマスです。 ところで、日本の森林面積は国土のどのくらいかご存知ですか。 

答えは67%が森林です。 山が急峻で林業に適さないと言われていますが、オーストリアやスイスのアルプスと余り変わりません。オーストリアなどでは機械化がすすみ、間伐などを効率的に行っています。日本の森林は戦後、植林が進み、すでに伐採できる大きさになっていますが、コストがかかるなどの理由であまりちゃんと活用されていません。ただ、量としてはかなり多くの資源が山にあるのは事実です。 これらの資源をどう使うかがこれからの大きな問題になってきます。

 ■エネルギーの上流と下流の問題 

もう一つの大きな問題はエネルギーの使い方の問題です。 エネルギーはさまざまなカタチで種類を変えていくので、そのエネルギーの大元がどうやって産み出されたかが重要です。その大元のエネルギーのことを1次エネルギーといいます。日本は工場などの生産部門、交通などをになう運輸部門など、いろいろとエネルギーをつかう場所がありますが、日本の1次エネルギーの40%は住宅、オフィスなどの私たちの住まいで使われます。 しかし、日本の建物で使われるエネルギーについて、法律による規制はありません。最近、300㎡以上の大規模な建物についての届け出が義務づけられましたが、そこでも規制にはなっていないのです。 一方、ヨーロッパは法律で厳しく決められていて、2020年前後には新築の建物はカーボンニュートラルでなければならないと決められています。カーボンニュートラルというのは、石油などのエネルギーを燃やしたときに発生する二酸化炭素がでない。ということ、すなわち、エネルギーを少ししか使わず、使う場合には、二酸化炭素がでないエネルギーでエネルギーをつくりださないといけないという状態です。二酸化炭素がでないエネルギーは、再生可能なエネルギーのことですが、太陽光発電などのエネルギーです。 ですから、日本の規制はないに等しく、エネルギーが無駄使いされています。ですので、これをまず減らしていくことが重要なのです。

 ■住宅のエネルギー 

住宅でつかうエネルギーは大きく3種類に大別され、地方によって異なりますが、おおよそ、3分の1ずつとなります。一つは暖房、もう一つはお風呂などの給湯、もう一つは家電などの機器類で使うものです。  ぱっと考えると、冷房とか思い浮かびますが、エネルギーの10%程度の割合です。ただ、冷房のピークが夏の暑い日の午後2時〜4時で、産業用の電気のピークとも重なり、ここを抑えることが非常に重要なので、この抑制が電力会社のキャンペーンとして、テレビコマーシャルなどに大きく流れていたせいで、夏の冷房のことを暖房よりも意識しやすいという結果になっています。エネルギー的には、ほぼ全国、0℃近くまで下がるとすると、快適な20℃まであげるためには20℃の落差があります。冷房が35℃から28℃まで下げる7℃の落差だとすると、そちらの方が小さいのでやはり暖房の方が多くエネルギーを使うことになります。 さて、発電所が遠い場合、遠くを運んでくるために必要なコストは、当然1次エネルギーとして計上されます。日本の場合、遠くから電気を送られてくることが多いので、送電ロスが大きいのです。実際、家に届くまでで、35%程度になっていると考えられてます。なんという無駄でしょうか。わざわざ起こした電力はすでに、3分の1になっているのです。議論を戻しましょう。熱でタービンを回し、電気が起きます。電気から熱にすることはさらに非効率的になってきます。ですから、熱は熱で使うことがよいと言えます。熱源は石油でもガスでも太陽熱温水パネルでも良いと思います。そうやってエネルギーの特質を理解することが大事だと思います。

 ■なぜ、エネルギーを節約する話しにならなかったのか。 

ここから先は推測です。ただ、311前は原発による電力供給を50%に増やそうとしていたのは事実です。そして、需要を喚起するために、電力会社は安全な「オール電化住宅」を推進します。お年寄りにも安全なオール電化です。ただ、ここで、どのくらいIHクッキングヒーターが電気容量をつかうかご存知ですか。種類にもよりますが、20Aを超えるものがたくさんあります。オール電化にするなら、100Aでの契約が必要だと言われた家庭もあります。家一軒が30Aで十分だということを考えると、この量は家1軒が3軒になっていくという、電力をより必要な社会にしていくための動きに他なりません。冷蔵庫が省エネ形になっても容量が大きくなれば、トータルの電気量が増えていきます。テレビも同じです。大型のテレビは結構大量の電気を使っています。テレビや冷蔵庫などはたしてどの大きさが必要かもう一度チェックしてみるのもよいと思います。それだけではなく、お湯張ポット(断熱性能の弱い)も結構な曲者です。あれ1台で冷蔵庫1台分の容量になります。 この裏には、総括原価方式と言って、電力会社の電気料金は必要な経費に歩合をかけて決められるという不思議なルールがあります。こうであれば、できるだけ原発をつくり、コストをかけて、それをオンする方法で電力会社は儲かります。需要喚起と言えば、言葉はよいですが、どんどん電気に依存する生活に慣れていってしまった私たちにも責任があります。 

■どのくらいの量のエネルギーを無駄使いしているか 

住宅でいえば、ヨーロッパの住宅の3〜5倍以上多くのエネルギーを使っています。 それを3分の1や5分の1にするにはどうしたらよいか。決め手は家の建て方と基本的な構造の2つにあります。家の建て方は大事です。いかに、冬は太陽の熱をうまく取り入れ、夏はいかによけるか、それにつきます。また、日本の家が旧来持っていたような土壁が蓄熱作用があるので、気候の厳しい時間を遅らせる機能があります。 また、風通しはとても大事です。そういった環境的に家を工夫することがとても大事です。  

一方、家の断熱も大事です。一時、高断熱高気密住宅が世の中にデビューした頃は、この手の家の窓が小さくて不評でした。当時は窓の性能も良くなく、小さくせざるを得なかったのですが、やはりできるだけ、エネルギーを取り込むこと考えると、大きくした方が有利です。この断熱性能は基本的な建物の性能とも呼ばれます。  日本に次世代省エネルギー基準という基準があるのですが、これはもう10年以上前に決められ、私に言わせると前世代エネルギー基準とさえ言えると思います。国交省のトップランナーはただのトップランナーではなく、周回おくれのトップランナーと言わざるを得ません。その次世代エネルギー基準でいうと、私が必要だと思うのは、東京で北海道の次世代エネ基準にするくらいのことが必要だと思っています。そうすると、東京に立つ家であれば、エアコン1台で夏も冬も過ごせるぐらいの性能を持つことができます。贅沢な作りにしなくても、いい性能の家は本当にエネルギーを節約することができます。  最近では良いソフトができていて、その建てられる状況に合わせて、建物の燃費がわかる様になりました。屋根や壁のデータ、窓の位置など、プラス周囲の建物の状況、その立つ場所をインプットすると、どのくらいのエネルギーをつかうか、まるで車の燃費を示す様にわかりやすく教えてくれるものであります。 こうやって家を建て始めれば、いま各メーカーが出そうとしているスマートハウスと同じような効果をあげることができます。今、メーカー主導で出しているスマートハウスは、エネルギーもつくるけど、無駄使いをする部分も大きいです。それよりも、色々な装置をつけずに、エネルギーを省エネルギーにする方がよほどスマート(賢い)といえると思います。

 質問やご意見お待ちしています。

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