2012年3月4日日曜日

卒原発から「省エネルギー」経由、再生可能エネルギーへ

山形新聞に寄稿し、3月1日掲載された記事です。

 昨年の三月の福島第一原発の事故を契機に、エネルギーに対する関心が高まった。エネルギー自給率がわずか四%の日本においては当然のことである。ここ何年かは休眠状態にあった火力発電所を動かすことでしのげる。でも、将来に向けてきちんとしたビジョンを確立しなければならない。山形県は地震直後は県民全体で節電運動を実施し、知事は「卒原発」を表明した。非常に先進的な取り組みである。石油、石炭に代表される化石燃料は二酸化炭素の排出の問題に加え、枯渇の問題、中東の政治的な不安定など先行きは暗い。これらの問題がなくても、人口が増加し経済が発展しつつある中国やインドなどの需要が増えるため、燃料の値上げは避けられない。これ以上そこに頼るべきではない。だからといって、まだ福島第一原発の事故が収束せず、事故の原因究明がされていない状態で原子力に戻る選択肢はない。結果として私たちは再生可能エネルギーでやっていくことを前提に考えなければいけない。
 では、現在使用している化石燃料を現状の使い方で、再生可能エネルギーに代替していくことは可能なのだろうか。答えは否である。私たちは今までエネルギーを鷹揚に使ってきていて、無駄遣いが非常に多い。このエネルギーをまず積極的に節約しないといけない。それは生活水準を下げるということではなく、快適性はそのまま、あるいはそれ以上にしてエネルギーは減らせる。日本の建物は断熱性能があまりにも低い。現在の日本の次世代省エネルギー基準のトップクラスであっても、ドイツなどの先進国に比べると3倍〜5倍のエネルギーを使ってしまう。そこを改善するべきだ。断熱性能をあげることで、快適かつだだ漏れで使っていたエネルギーを節約できる。具体的には屋根、壁の断熱材の厚さを増やすこと、窓の性能を向上する必要がある。そうやって器の性能をあげ、太陽の日射や風通しを考え、快適性を確保する。そのうえでエネルギーを化石エネルギーから再生可能エネルギーにシフトしてくのだ。 その実証実験が山形エコハウスである。これは災害時にも効果的であった。 地震後の二日間の停電のなか、暖房器具なしで室温は18℃を維持し続けた。
 再生可能エネルギーは場所を必要とし環境の影響を受ける。山形は風況が良い風力発電の適地もあり、森林資源が豊かでバイオマスエネルギーの活用、太陽電池の設置場所もあり、小水力発電の可能性もある。これらは雇用を増やし、今までは地域外に流出する資本を地域内で流通できるようになる。地方それ自体が再生できる可能性を秘めている。この再生可能エネルギーへのシフトは、農業、産業、IT革命に続く第4の革命を言われる。すぐに始めるべきである。私は東北芸術工科大学での活動をとおして、このエコハウスで集めた知見を地域に還元し、このエネルギーシフトを進めたい。